りそうきょう
「ようこそいらっしゃいました!ここは あなたの りそうきょうです!」
「エッ…?」
「あなたの のぞみが なんでもかなう ばしょ。あなたがおうさま むしろかみさま。かなしいことも つらいこともないところ。」
「ソレはすごいネ。だからキミたち、蝶々みたいな羽を生やしてるの?ここに住む妖精さんかい?」
「そうです。せいかくには わたしたちは ここのじゅうみん。みんな あなたがだいすき。じゅうみんとして あなたをかんげいします。」
「そう…嬉しいナ。でも、いいや。だって、ここには彼らはいないんでしょ?」
「あなたがのぞめば かれらも きてくれる。かれらも あなたがだいすき。だから いっしょに しあわせにくらしましょう。」
「お誘い感謝するよ。…でも、ソレはないネ。無条件でボクを好きでいてくれるなんて、ソレはボクの知ってる彼らじゃナイ。ひねた人もいるからネ。何より…ボクが勝手に何処かへ行くのは駄目サ。」
「…どうして?ここでは なやみもなくなってしまうのに?」
「母さんをほっておくワケにはいかナイから。…あーあ、ここはとっても魅力的な場所だケド、どうやら帰らなくちゃいけナイな…。」
「どうして?ここでは だめなのですか??ずっと しあわせにくらせるのに…あなたの おかあさんもいます。ほしいものも ぜんぶ ここにあるのに。」
「しいて言うなら、ボクの世界がボクを呼んでるカラ。…なぁんてネ!……それじゃあネ。」
「ようこそいらっしゃいました!ここは あなたの りそうきょうです!」
「フン…?」
「あなたの のぞみが なんでもかなうばしょ。あなたがおうさま むしろかみさま。かなしいことも、つらいこともないところ。」
「…ボクの望みが分かるのか?」
「はい もちろん。あなたの にんげんとしてのからだが ここにはある。あなたは あなたのあしで あるけます。まだみぬらくえんに あしをふみいれられるのです。」
「ソレは良いな…」
「ここのじゅうみん それにあなたのしってるひとも あなたとあるいてくれる。あなたはどこへいっても かんげいされます。」
「…だがな。ボクはこのような地を歩きたい訳では無い。夢の世界を歩く趣味は無いからな。」
「ゆめじゃないです ここはげんじつ。」
「そんな言葉、信じられるか。怪しいものだ。……ボクを惑わせようとしても無駄だ。ボクの知る世界を、ボクはゆく。」
「…そんな。みんな あなたを まってくれてるのに。」
「フッ…知るものか。ではな。」
「ようこそいらっしゃいました!ここは、あなたの、りそうきょうです!」
「……うん?」
「あなたの のぞみがなんでもかなうばしょ。あなたがおうさま むしろかみさま。かなしいことも つらいこともないところ。」
「ふぅん。…で、出口は何処だい?」
「…えっ?」
「出口は何処か聞いてるんだ。…無いというなら、作り出すまでだけれど。」
「ここには あなたの のぞむものが なんでもあります。あなたは わたしたちと しあわせにくらせます。…それなのに でくちを のぞむのですか?」
「はっきり言うと、僕は興味が無いんだ……邪魔をするなら、容赦しないよ?」
「ひきとめても むだなのですか……ざんねんです。」
「仕方ないさ。だから、さようなら。二度と会う事は無いだろう。」
「ようこそいらっしゃいました!ここは あなたの りそうきょうです!」
「………」
「あなたの のぞみが なんでもかなうばしょ。あなたがおうさま むしろかみさま。かなしいことも つらいこともないところ。」
「………」
「みんな、あなたがだいすき。わたしたちは あなたをかんげいします。いっしょに しあわせにくらしましょう。」
「断る。」
「…どうして?ここには あなたの しあわせしかないのに。」
「断らなかったら、帰れなくなるだろ。それに…」
「それに?」
「怖ェよ、逃げ出したくなる程に。」
「どうして?らくえんに ふみだすゆうきが ないのですか?」
「…そうとも言えるな。」
「ここにくれば つらいこともかなしいことも きえてなくなるのに。」
「…此処、なんか気持ち悪ィ。俺には絶対合わねェ。」
「ここより しあわせになれる ばしょが あなたに あるのですか?」
「……知るかよ。」
「それなら どうして…」
「笑いたければ勝手に笑え。…俺はもう行く。」
「ようこそいらっしゃいました!ここは あなたの りそうきょうです!」
「……え?」
「あなたの のぞみが なんでもかなうばしょ。あなたがおうさま むしろかみさま。かなしいことも つらいこともないところ。」
「…だそうですよ、ご主人。」
「うーん…どうしたものかなあ。」
「ここのじゅうみんは みんな あなたたちがだいすき。さぁ いっしょに しあわせに くらしましょう。」
「楽園みたいですね~…此処の雰囲気といい、住民といい。確かに悩みの無さそうな所かも…」
「…なら、此処に住むか?私は旅を続けたいから、お別れだな。」
「えーっ!」
「だいじょうぶ。ここでも たびはできます。ここでやりたいように たびをすればいいんです。あなたたちが おとずれた すべてのばしょで かんげいされます。」
「私はね…歓迎されたくて旅をしている訳じゃないんだ。剣の道を極めると約束したからな…こんなぬるま湯につかってたら、師匠に怒られてしまう。」
「まぁ、ご主人ならそう言いますよね。惜しいです、素敵な所なのに。……という訳で、ぼくもお断りします。ぼくは、ご主人についていきますから。では、さよなら。」
「…らしい。ふふ…嬉しいな。……それじゃあ、失礼する。」
「ようこそいらっしゃいました!ここは あなたの りそうきょうです!」
「は~~っ?」
「あなたの のぞみが なんでもかなうばしょ。あなたがおうさま むしろかみさま。かなしいことも つらいこともないところ。」
「……そりゃスゲー。」
「わたしたちは ここのじゅうみん。みんな あなたがだいすきです。いっしょに しあわせにくらしましょう。」
「何それ、悪質な勧誘?…オレはお前ら好きでもねーし、興味ねーな。」
「じゃあ あなたのすきなひとを よべばいいんです。そのひとも あなたがだいすきになる。ずっとずっと なやみもなく しあわせなじかんを ともにすごせます。」
「ふーん、やっぱいーや。いらねーよ、そんなもん。だって、所詮そいつらも偽物なんだろ?」
「ちがいます。ここのすべては ほんものです。」
「皆が無償の愛をオレにくれるってか?……いらねーよ。偽物の世界の幸せ?そんなものに、価値は無いねー。」
「……」
「ガッカリしても無ー駄。何もしなくても皆が大好きでいてくれるなんて、ここが夢だからじゃねーの?……興味ねー、つかいらない。さーて、出口出口っと。」
「だから、申し上げたのです。皆さんは、あなた方の夢に惑わされるような方々ではないと。」
「ふふふふふふ…うぅ~ん、そうだなぁ♪この結果はこれで面白いけど…誰か一人くらい、引っかかっても良かったよねぇ。」
「あら、アタシの予想通りでもあったわ。…やっぱり、夢でも新世界を受け入れられないのよ。自分達の世界だけが正しくて絶対と言いたいらしいわ。」
「……意志が強いのでは、ないでしょうか?」
「さぁねぃ♪楽園に踏み出す決心がつかなかっただけかもぅ。…僕、性格悪くないし、誰かが望めば本当にずうっと楽園で暮らさせてあげたのにぃ。」
「……それは、誠ですか…?」
「あっ、あっ、もしかして…怒らせちゃった?」
「信じられないだけでしょ。コイツは無視していいわよ、ロクなこと言わないから。」
「ひっどぉーいっ!あっ、ねえねえ、キミならどうしてた?」
「……はい?」
「り・そ・う・きょ・うっ♪この人達と同じようにされたら、誘いを受けてた?」
「いいえ。私には、あそこでなすべき事が御座いませんから。」
「…だろうねぇ。」
「分かってたなら聞かないで頂戴。……で、コイツら、起こすの?」
「え~、寝顔可愛らしいじゃん。もっと見ていこ……うわぁ。なんか視線を感じるなぁ~っ。」
「……感心致しませんよ。」
「あら、怒られたわね。うふ、ねぇねぇ、どうするのかしら?」
「どぉしてニコニコしてるのぉ…?まぁいっか。ここは彼女に任せよう。それじゃあ、僕たちはここで退散~っ!」
「…らしいわ。あと宜しく。」
「ふふふふふん…それじゃあ、ばいばぁーいっ♪」
「………」
「皆様、お目覚め下さいませ。出口はこちらで御座います。」
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